厚生年金。あなたの会社はきちんと加入しているでしょうか。
万が一加入していないのであれば、立ち入り検査され、過去の保険料を請求される可能性があります。
というのも、2015年度から、厚生労働省と日本年金機構が本格的に加入指導に乗り出し、強制的に加入させる方針をとり始めたからです。
加入しなければ差し押さえなどの強制措置が取られてしまいます。

そうならないためにはどのような対策をすべきでしょうか。

厚生年金への加入義務

まず既成事実として、強制加入指導以前から法人として設立された事業所は厚生年金を含めた社会保険への加入が原則義務となっています。
たとえ従業員がおらず自分と配偶者だけで経営していても、法人から報酬を受けている以上は加入が義務付けられています。パートやアルバイトなど雇用形態も問いません
例外的に加入が義務づけられていないのは以下のような従業員のみです。

  • 70歳以上の社員
  • 2箇月以内の期間を定めて雇用される社員
  • 通常の社員の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3未満の社員

厚生年金保険の保険料について

保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に決められた保険料率をかけて計算されます。
この保険料率は平成29年9月まで被保険者の区分に応じて毎年引き上げられます。
特徴的なのは事業主と被保険者とが折半して負担するところです。

保険料の種類 賞与の保険料額
毎月の保険料額 標準報酬月額 × 保険料率
賞与の保険料額 保険料率

中小企業における厚生年金加入の現実

労使折半という事情もあり、残念ながら義務であるはずの社会保険に加入していない中小企業が多数存在している実情があります。
厚生労働省の調査によると、違法に加入を逃れている中小企業の数は約80万社に上っています。

国税庁との連携により未加入調査が強化された

そのような現状の中で、厚生労働省は国税庁から国税データの情報提供を受けて、違法に加入を逃れている事業所の割り出し作業を行うことになりました。
平成27年度から強制措置が取られているため、すでに立ち入り調査等による加入を指導は始まっています。
なお、国税庁と連携した理由は国税データには給与に関する情報が含まれているため、これまで未加入理由として多かった会社が休眠中であるいう言い逃れをできないようにするためです。

調査強化による過去2年分の保険料請求

通常年金事務所から呼び出しの前に年金事務所長名義で加入手続きに必要な書類(来所通知)が送られてきます。
これを無視して手続きを行わない場合には、厚生年金保険法第100条及び健康保険法第198条に基づいて立入検査され、認定による加入手続きの対象となる旨の注意書きが書かれています。
そのため立入検査で社会保険に加入すべき人がいると認定された場合は、社会保険庁の職権により強制的に社会保険加入手続きが取られることとなります。
またこの場合は保険料を被保険者となるべきであった人全員分2年間遡って支払わなければならず大きなリスクとなってしまいます。
前述の通り基本的に保険料は事業主(会社)と被保険者(社員)が折半することになっているため、社員も遡って過去2年分の保険料を支払わなければならず、労使トラブルになりかねません。

強制加入の前に自ら加入の手続きをしましょう

前述のように強制的に加入させられてしまった場合は、想定外の保険料の負担リスクにとどまらず、労使の信頼関係にも悪影響があります。
それを防ぐためには自発的に厚生年金に加入しましょう。厚生年金への加入実績によって助成金の受給資格が得られる可能性もあり、出費にはなりますが義務である厚生年金加入で得られるメリットもあるのです。
調査を受けることになる前に自発的に手続きを行うことが重要です。
加入のために何が必要で加入するとどのようなメリットがあるのか、専門家である社労士に相談してみると色々と制度の理解が深まると思います。


強制加入のリスク以外にも、少なくとも良い人材を確保するための最低条件です。求職者がまず最初に確認するのが、社会保険に加入しているかどうです。
加入の手続きをきっかけに助成金制度などについても社労士から情報を得られる体制を作っておけば、人材に関する出費を資産に変えるノウハウも共有してもらえるでしょう。